後楽園ホール・12月3日
夕方5時にもなると、周囲はもう、大分暗くなってるんだけど、
ふと、上を見上げると、空はまだダークブルーにしかなってなくて、
強風に流される白い雲が、ハッキリ見えるもんで、なんか不思議な感じなんだわ。
後楽園ホールのロビーには、各チャンピオンの写真が飾ってあるんだけど、
久し振りに眺めてたら、随分歯抜けなもんで、驚いてしまったなあ。
長谷川穂積さんと粟生隆寛さんは、まだ間に合ってないのは分かるんだけど、
李冽理さんと亀田大毅さんのがないし、そう言えば以前、亀田興毅さんのも、
見たことなかったなあ。
OPBFは現在9名のチャンプがいるんだけど、6名しかないし、
日本チャンピオンに至っては、返上した清水智信さんのを入れても、
たった7名分しかないんだよね。
エライって思ってたのは、八王子中屋ジムで、
荒川仁人さんとチャーリー太田さんの写真、早かったもんなあ。
あそこのあの場所に、ベルト姿の写真飾られるのってスンゴク嬉しいと思うからね。
◆鈴木誠君(18鴻巣)×矢野克典君(E&Jカシアス)……L 4R
デビュー戦の26才・埼玉県と、デビュー戦の27才・神奈川県。
サウスポーのデビュー同士の試合が始まった時、東席1人、西席5人からスタート。
1R、全く同じリズム感で、行く時と見る時のタイミングも全く一緒なもんで、
何だか、相打ちして、パンチ強い方が勝ちそうな予感なんだわ。
2R、頭半分デカイ、鈴木君、腕が体から離れ過ぎだし、
下半身のバランスも良くないもんで、内側突かれたらヤバイんじゃないかって、
そんな感じだったんだけど、1分過ぎた頃、その鈴木君の方が、
矢野君に、ドカーンって右ストレート打ち込むことできて、矢野君ダウン。
何とか立ち上がってきたんだけど、鈴木君、一気追撃で、再度のダウンでエンド。
◆渡辺慎吾君(18古河)×林満久君(福田)……58㎏
0勝1敗のサウスポー、30才・埼玉県と、デビュー戦の20才・石川県。
1R、林君、開始ゴングと同時にフル回転で、飛ばす飛ばす。
彼、明らかに力入り過ぎなんだけど、怖がらずに前向きなんだわ。
渡辺君の方は、結構いいストロークしてて、冷静な感じのスタート。
2R、やっぱり林君、肩に力入り過ぎなんだけど、バランスとってもいいんだわ。
渡辺君、なんだかパンチに力入り難いような足の送りしてるなあ。
3R、林君、気分良くして、どんどん行って、左ダブルなんてのも見せてて、
渡辺君の方は、手数も少ないし、パンチの回転力不足だし、
そもそも、気持ち負けしてるみたいんなんだよね。
4R、渡辺君、気合い入れ直してる形跡はなくて、一方的な決着かと思ってたら、
なんとなんと、林君、まるで違う人かと思うほどの、いきななりの疲労失速で、
もうグダグダになってしまって、パンチも撫でるようになってしまったんだわ。
それでも、前半のポイントまでひっくり返されることなくて、39-37×2、39-38の、
3-0で、林君のデビュー戦判定勝ち。
◆熊澤祥大君(石川)×高橋謙太君(協栄)……SB 4R
3勝(2KO)1敗の23才・青森県と、6勝(1KO)3敗の21才・広島県。
二人ともサウスポーで、この後の試合もサウスポー同士だったし、
この日は、初めの四試合で、なんと7人がサウスポーっていう変った日だったな。
この日の自分的一番の目当ての試合、実はこれで、
二人とも今年の新人王トーナメントの途中敗退組なんだけど、
なかなかいいボクシングしてたもんで、印象に残ってるんだわ。
熊澤君は、軸太くて、バランスのいいボクシングするんだけど、
二回戦で、微妙な判定の結果の優勢負けして、ちょっと残念だったんだけど、
高橋君の方は、激戦グループの中のシードボクサーで、
新垣翔太君や岩崎悠輝君破って、準決勝で、コーチ義人君に判定負けしたんだけど、
パワーもテクニックも半端じゃないんだよね。
1R、二人ともレベルの高い攻防で、距離取っても接近戦でも、ちゃんとしてて、
ただ、パンチ力あって、手数も勝ってるのは、高橋君の方だったなあ。
2R、熊澤君、接近戦での左右連打が得意なのが、ハッキリしてきて、
中間距離からの交わしざまとか、打ち終わりに合わせるのが巧いのが高橋君。
高橋君は、もうB級なんだけど、熊澤君はこの試合勝ってB級昇格狙い。
3R、高橋君、ちょっと気抜けたような、おざなりの右ジャブ、フワーッと出す時あって、
その引きも甘いもんで、そこんとこ熊澤君の左ストレートで狙われてんだわ。
ちょっと熊澤君、盛り返す雰囲気出てきたね。
4R、なかなか面白い展開になっていったんだけど、残り1分切ったとこで、
高橋君、細かい連打ドコドコ当てて、それ、元々熊澤君の得意距離だったんだけど、
全く、反撃できなくなってしまって、途中マウスピースは飛ばされるし、
クリンチ後のリスタートで、再度の連打で腰伸びてしまったとこで、レフェリーストップ。
高橋君、まだ21才だし、これからも伸びると思うなあ。
いつもいつも、ホント、気持ちのいいボクシングするよね。
◆守屋和明君(石川)×桜井康弘君(レパード玉熊)……F 6R
4勝(1KO)3敗のサウスポー、23才・東京都と、
6勝7敗のサウスポー、29才・埼玉県。
1R、桜井君、トランクスに “狼王” って刺繍入ってんだけど、
接近戦からの打ち合いになると、目線切って、すぐ顔下げてしまって、
狼じゃなくて、猫みたいになってしまうんだわ。
良く詰めるんだけど、そこからがね……。
2R、守屋君、必ずしもカウンター狙ってる訳でもないのに、変な待ち時間多いし、
桜井君は、そんなの当たんないでしょっていう、飛び込みざまの一発だけだし、
とっても、とっても、とっても退屈な展開なもんで、ここでコーヒータイム。
多分、守屋君の判定勝ちなんだろうなって、推測。
そしたら、八王子中屋ジムの筒井さんとバッタリで、
この日のメニュー、正直、それほどの試合組まれてないのに来てたもんで、
聞いたら、やっぱり、お目当てボクサーの偵察なんだよなあ。
この人、ホント、真面目な人だよなあ。
年明け早々、荒川仁人さんやチャーリー太田さんの防衛戦あるもんで、
クリスマスとか、大晦日も正月もないようなこれからになるもんで、大変なんだよなあ。
そう言えば、荒川さんも顔見せてて、少し話したんだけど、
彼、夏の伊豆合宿なんかで、18古河のメンバーとは顔見知りなもんで、
そっちの応援みたいね。
◆泉圭依知君(18鴻巣)×藤沢一成君(レパード玉熊)
………SFe 8R
8勝(2KO)3敗の28才・埼玉県と、9勝(2KO)5敗2分の33才・神奈川県。
1R、ゴングと同時に、泉君、いきなり体ぶつけて、といかく所構わずの連打で、
藤沢君、押されっ放しで、それでも何とか空いてるとこ、真面目に突いてるな。
2R、泉君、カッコ付けてやる気、全く無くて、フットワークなんてもんじゃないし、
こうなると、藤沢君の集中力だけがキーなんだよね。
3R、藤沢君、押し合いの体力戦に消耗気味だし、バッティング嫌がってるし、
振りも弱くなっていってるし、手数も減っていって、6:1くらいかなあ。
4R、それにしても、泉君のスタミナは尋常じゃなくて、延々のトコトコボディで、
藤沢君、明らかに効いてきて、元々パンチ力無いんだから、
もう少し力溜めてから、大きいの打ち返せばいいのにって思ったんだよね。
5~6R、それは、完璧に相手の距離なんだから、
藤沢君、もう少し足使ったり、体入れ替えて、何とかしたらいいのに、
とにかくこのままだと、ズルズルだよって感じで、もう延々のゴニョゴニョ大作戦。
7~8R、自分の中では、リング上、なんか別の種類のボクシングになってて、
とてもA級の試合には見えなくて、案の定のズルズルエンド。
攻勢は圧倒、泉君だったもんで、78-74、77-76、75-77の2-1で、
泉君スプリット勝ちって聞いた時は、ちょっと驚いて、
泉君のああいうスタイル、気に入ってないジャッジもいるんだなって感じがしたな。
それにしても、行って来いで、6ポイント差もあったんだわさ。
◆小澤剛君(18鴻巣)×河井純一郎君(ピストン堀口)
………L 8R
9勝(2KO)3敗の25才・埼玉県と、6勝(1KO)12敗5分の35才・神奈川県。
1R、寄りの強い小澤君に対して、河井君、小さいのを鋭く打てないもんで、
結局、小澤君の強烈ゴニョゴニョボクシングに、押し切られそうなのが見えてきて、
二試合続けて、同じようなスタイルのボクシングは流石にシンドクなってしまって、
この回終了後、長々の休憩タイム突入。
小澤君、体幹太いし、バランスいいし、気持ち強いし、
距離取って、ガンガン打ち合うとこ、見たいんだけどなあ。
で、すれ違いざま、宮森卓也君、激励。
◆大塚隆太君(18鴻巣)×ナンチャラ・ピニョ(タイ)
8勝(1KO)3敗1分の24才・埼玉県と、10勝6敗位の24才。
この間の千葉透さんの相手のタイ人、やっぱりソッコウの転がり負けだったみたいで、
ソッコウ、招聘禁止ボクサーになってたね、やっぱり。
で、大塚君は好きなボクサーだし、宮森君の前だから仕方なく見てたんだけど、
パンフに戦績印刷されてないほどの謎のボクサーみたいだったんだけど、
でも流石、心得てて、きっちり2ラウンドに寝転んでたね。
あんまりチンタラやってると、呼び屋も怒られてしまうもんで、
初め、一見ヤル気のようなもの見せて詰めてたんだけど、
そこからの攻撃、敢えて手控えて、大塚君の殺人パンチ待ちってことで……。
2R、コツンって当たったのを機に、面白かったよお、
両足揃えたまま、体真っ直ぐ伸ばして、マンガみたいにバッターンって倒れて、
そういうの大分練習したみたいで、最後は、マットに頭打たないように上手く倒れて、
カウントエイトで起き上がる素振りして、でもダメですってとこまで完璧で、
お前、アホかあって、まるでコミックショーみたいだったもんね。
大塚君、ファンへの顔見せで仕方なくて、みんな、凄いねえって盛り上がってたけど、
見てて、実に気の毒で、折角体作って、練習積んできたっていうのに、
あんなのなんのキャリアにもならないし、もっとマシな試合見たかったなあ。
◆宮森卓也君(18古河)×鄭眞?君(韓国)……SF 10R
10勝3敗1分の24才・茨城県と、9勝7敗位の20才。
宮森君、初めてのメインイベンターなんだけど、相手外国人だし、
韓国ボクシング界っての低迷著しくて、国内ランキングも歯抜けだらけだし、
大丈夫かあって感じだったんだけど、取り敢えずは国内チャンプらしいし、
OPBFのランク2位だっていうし、相手の名前、読めなくて、漢字変換もできないけど、
取り敢えず、レビューしてみるね。
1R、驚いたなあ、相手、気持ち、とっても強くて、初めっからガンガンなんだわ。
とにかく、詰めて来るし、追いまくって来るし、変な形のパンチなんだけど、
ブンブン殴り丸って感じなんだわ。
宮森君の方は、若干戸惑って下がりながらなんだけど、結構的確に打ち込んでたね。
2R、相手構わずのガンガン虫に対して、宮森君、小さく鋭く、色んな角度から、
相変わらず、下がりながらなんだけど、なかなかの健闘。
ただ、この下がりながらってのは、結局延々最後まで続いたんだけどね。
3R、相手、とっても単調な不器用なくらいの、一本調子ボクシングなんだけど、
それでも、一発一発には力こもってて、まともに喰らったら被害甚大そうで、
スピードはないんだけど、とにかく、どんな体勢からでも手出して来るもんで、
一瞬でも気抜いたらヤバそうな雰囲気満々なんだわ。
特にクリンチの離れ際なんか、とっても危ないんだよね。
4R、宮森君、アッパーなんかも混ぜて、タイミングのいいコンビネーションなんだけど、
相手も、打ち込まれると、余計ムキになって反攻して来て、気強いんだよなあ。
ここまで、全体の流れはそれでも、宮森君だなあ。
5R、相手、それまでにも増して突っ込み度上げてきて、
その結果、バッティングひどくなって減点喰らったんだけど、
そのリスタートの時、レフェリー、宮森君の状態、全く確認しなくて、
まだ彼が横向きで一息ついてた時、雑なリスタートさせてしまって、
宮森君、すぐ気付いたから良かったけど、ホント、危うかったんだわ。
あのレフェリー、ホント、マジ、いつも何事にも危ないんだわ。
6R、相手、たまにサウスポーチェンジしたりするんだけど、工夫と言えばそれだけで、
基本を押さえてしまえば、全く怖くはないだけど、とにかくスタミナだけは凄くて、
宮森君、ずっと下がりフットワークだけなもんで、体力心配なんだよね。
7R、相手、気持ちとスタミナだけのボクシングなんだけど、
後半になると、それが勝負決する時もあるし、宮森君の集中力だな、問題は。
宮森君もディフェンス甘くなってしまって、ちょくちょく当てられるようになってるぞ。
8R、宮森君、残念なのは、パンチ力今一つってとこで、もう少し強く打ててれば、
もっとダメージ与えられるんだけど、そろそろ彼の方のスタミナが……。
9R、ここまで結構打たれ込んでるもんで、実は、相手の方もかなり消耗してて、
益々荒っぽくて雑なボクシングになっていったんだけど、
こうなると、気持ちの強い方が生き残るって感じになってきたよ。
10R、ヘロヘロは両者同じみたいで、相手ももうガンガン詰め、出来なくなって、
で、一気にカウンター戦法に変えてきたんだけど、それが結構有効で、
最後、疲れてきたもんで、仕方なくそんな攻め方になったんだろうけど、
もっと若いラウンドから、ガンガン攻めとこのカウンター戦法を、
緩急つけて、意識的にやられてたら、正直宮森君、ヤバかったなって思ったな。
最後は、恒例の足止めての殴り合いだったんだけど、
結局、96-94、96-95、95-97の2-1で、宮森君、辛勝。
滅多に見られないほどの、強烈詰め詰めボクシング続けられて、
宮森君、あんなに後ろ歩き続けたら、普段の倍以上消耗すると思うんだけど、
とにかく、最後まで踏ん張って、前半の貯金、後半、かすめ取られはしたけど、
ギリギリのとこで踏みとどまって、ナイス・ファイトだったよ。
彼、二年ほど前まで、健気に頑張るんだけど、途中フッと弱気見せると、
一気に萎えてしまうっていうような、ひ弱なとこあったんだけど、逞しくなったよなあ。
リング上では、かなり赤くなってるように見えてたんだけど、
後で近くで見たら、宮森君の顔面、それほどのことなかったなあ。
この日は、高橋謙太君と宮森卓也君が、いいとこ見せてくれて、なかなか良かったよ。